お役立ち情報

超高齢社会におけるこれからの健康診断~心不全パンデミックに備えて~

  • AMI株式会社

CEO

小川 晋平

オガワ シンペイ
TOP/Column/超高齢社会におけるこれからの健康診断~心不全パンデミックに備えて~

心不全パンデミックとは

「心不全」とは心臓の働きが徐々に低下する状態です。超高齢社会の日本では心不全の患者数は毎年1万人ずつ増加しており、2030年には130万人に達すると推計されています。
そして心不全の大流行「心不全パンデミック」が、将来日本で起こるのではないかと危惧されているのです。

健康診断における心疾患の検査について

日本における健康診断実施率は91%であり、他国(アメリカなどは58%(1))と比べ受診率が高くなっているのが特徴です。1972年より企業での健康診断の義務化や、2008年には「メタボ法」の施行など、日本では健康診断の重要性が強調されてきました。

このように高い受診率を誇る日本ですが、心疾患に関する健康診断チェックリストには「他覚症状における心不全の有無」しか含まれていないのが現状です。

健康診断における心疾患の検査には、聴診やレントゲン、心電図検査、血液検査、オプションとして心臓超音波検査などがありますが、筆者も含めて読者の皆様が一番馴染みのある検査は聴診ではないでしょうか。

心疾患の早期発見に向けた健康診断の課題

私たちが健康診断を受診すると、必ず聴診をされることになります。聴診は2000年以上行われており(2)、200年ほど前に聴診器の原型が開発されて以来、医療に聴診器は欠かせないものとなっています。聴診はフィジカルイグザミネーションの1つであり、心音を聴くことで心臓弁膜症や心不全の有無を確認しています。

しかしながら、聴診は医療従事者の聴覚に頼るという点から症状を見落としてしまうリスクがあり、例えば心臓弁膜症の一つである大動脈弁狭窄症における聴診の正答率は、50~88%(3,4,5)と報告されています。

それでは、心疾患の早期発見のために健康診断の受診者全員に心臓超音波検査を実施すれば良いのでしょうか?実情としては、心臓超音波検査は1人あたりの検査時間が15分~30分と言われており、検査者のスキルが求められるということも相まって、健康診断の受診者全員に心臓超音波を実施するのは難しいと思われます。

ですので、心不全パンデミックの到来に備えるには、健康診断で簡易的に心臓弁膜症や心不全といった心疾患を発見する(スクリーニング)方法や機器の開発が望まれるところになるでしょう。

まとめ

本コラムでは、心不全パンデミックの到来に向けた健康診断の在り方や課題に言及してきました。超高齢社会の日本がどのように心不全パンデミックに立ち向かうかは、世界中が注視しているテーマの一つだと思います。

株式会社エム・イーでは、AMI株式会社が開発した心臓弁膜症や心不全の新しいスクリーニング検査機器を取扱っています。是非お問い合わせください。
製品の詳細はこちら※医療従事者限定のページです。

 

AMI株式会社情報:
循環器内科医である、小川晋平医師が起業。
「どんなに素晴らしい治療の選択肢が増えても、診断されなければ助かる命も助からない。早期発見して最適な治療に繋げたい。」という想いで医療機器とサービスの開発を行う研究開発型スタートアップ。

参考文献
(1)Health screenings for men age 65 and older: MedlinePlus Medical Encyclopedia. (n.d.). https://medlineplus.gov/ency/article/007466.htm

(2) Montinari, M. R., & Minelli, S. (2019). The first 200 years of cardiac auscultation and future perspectives. Journal of multidisciplinary healthcare, 183-189

(3) Stokke, T. M., Ruddox, V., Sarvari, S. I., Otterstad, J. E., Aune, E., & Edvardsen, T. (2014). Brief group training of medical students in focused cardiac ultrasound may improve diagnostic accuracy of physical examination. Journal of the American Society of Echocardiography, 27(11), 1238-1246.

(4) Kobal, S. L., Trento, L., Baharami, S., Tolstrup, K., Naqvi, T. Z., Cercek, B., … & Siegel, R. J. (2005). Comparison of effectiveness of hand-carried ultrasound to bedside cardiovascular physical examination. The American journal of cardiology, 96(7), 1002-1006.

(5) Mehta, M., Jacobson, T., Peters, D., Le, E., Chadderdon, S., Allen, A. J., … & Kaul, S. (2014). Handheld ultrasound versus physical examination in patients referred for transthoracic echocardiography for a suspected cardiac condition. JACC: Cardiovascular Imaging, 7(10), 983-990.