先生のお話

糖尿病とフットケア〜みんなで患者の足を守りましょう〜

  • 東京ベイ・浦安市川医療センター

  • 循環器内科

診療看護師 / 下肢救済センター センター長補佐

有阪 光恵

アリサカ ミツエ
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糖尿病と合併症 「しめじ」 と 「えのき」

平成28年「国民健康・栄養調査」では、糖尿病が強く疑われる者(糖尿病有病者)、糖尿病の可能性を否定できない者(糖尿病予備軍)は合わせて約2000万人いるとされ、日常、私たちが糖尿病患者にかかわることは珍しいことではありません。

糖尿病には、「し・め・じ」といわれる、
微少血管が障害され引き起こされる「糖尿病神経症・糖尿病網膜症・糖尿病腎症」の三大合併症と、
「え・の・き」といわれる、
動脈硬化が原因で大血管が障害される「壊疽・脳卒中・虚血性心疾患」があります。

糖尿病の重症化を予防するためにも、糖尿病患者への日常的な教育やセルフケア支援は大きな意味を持ち、私たち看護師が患者へ根気強く関わり長期的にケアしていくことの役割は大きいと考えます。

糖尿病患者さんを見たら

2015年の国際糖尿病財団によると、毎年全世界では910万〜2610万人の糖尿病患者に足潰瘍が発症していると推測されています。
足潰瘍を持つ糖尿病患者の5年生存率は、足潰瘍を持たない患者の2.5倍死亡率が高いと報告されています。また、糖尿病潰瘍を持つ患者の半数が感染しており、中等度もしくは重度の足感染の約20%は足切断に至るとされています。

患者の足の異常を早期に発見し、大切な足の切断を回避するためにも、医療者が誰でも簡潔に糖尿病足病変のリスクスクリーニングを行うことができるツールにAAAスコアシートがあります。
このシートを活用して、糖尿病足病変リスクを把握し介入が必要な患者へ定期的なフットチェックを行い、足の変化を見逃さず異常にいち早く気付き、重症化しないような予防的ケアや定期的検査、異常時や懸念時の専門施設への紹介といった、患者の足を守るための在宅・施設・クリニック・病院の垣根を超えた連携したチームプレーが必要です。

フットケアを浸透させよう

糖尿病患者は合併症である
・糖尿病神経症により足にキズができても「痛くない」から気が付かない
・糖尿病網膜症により足の先が見えず爪切りの際にキズを作ってしまう、キズができても「見えない」
といったキズを悪くしてしまう要素が揃っています。
気がついた時には感染も広がり足の趾どころか足自体も救肢できない状況に陥ってしまい、その後のQOLを著しく低下させてしまいます。

そのため、フットケアはとても重要な役割を持ち、キズを作らない・作らせない管理が必要です。

とはいえ、靴下を脱いで足を人に見せる行為は手間と時間がかかります。私もフットケアを始めた当初は、患者に小言を言われることもしばしば。何かしらの理由をつけては足を見せてもらえないこともありました。

しかし、患者に病識をもたせられるような根気強い関わりと、実際に見た足の様子を毎回説明し、良くなったことを褒め患者と共に喜び、できていなかったことをできるようになるにはどうしたら良いか、患者と一緒に考えて患者と向き合っていくことでフットケアに対する「患者の思い」も変化してきたように感じています。
今では、私の顔をみるなり靴下を脱ぎ始める患者や自分の足の様子を細かく説明してくれる患者も多くいます。

しかしながら、私一人の活動だけでは守れる足の数にも限界があります。
フットケアをもっと広く世の中に浸透させ、多くの足をみんなの力で守ることがのできるよう、日々奮闘していきたいと思っています。