循環器不整脈治療に出会うまで
皆さんこんにちは、筑波大学附属病院で血管造影室看護師をしております安島良輝子と申します。
皆さんは、どんな職場で働いていますか?私は、血管造影室つまり血管内治療を専門とする部署で働いています。
主に、循環器領域の治療が大多数を占める当部署は不整脈治療や虚血性心疾患治療を日々行っています。
カテ室とかアンギオ室と聞くとどのようなイメージがありますか?
何をやっているかわからない、なんか怖そうという意見が多いかと思います。しかし、私たちスタッフは忙しいながらも毎日発見の連続で楽しく仕事をしています。
私は特に不整脈治療に魅了され、今日まで精進してきました。不整脈と聞くと難解な心電図や致死性不整脈があり、苦手意識を抱く方が多いのではないでしょうか。
何を隠そう、私もその一人でした。
血管内治療に携わりたいと以前勤務していた他施設のICUから退職し、当病院の血管造影室に転職しました。
実際働いてみると、虚血性心疾患の治療は以前の職場で経験していたので入り易かったのですが、不整脈治療の経験はなかったので苦手意識を持っていました。
不整脈治療、アブレーションというのを皆さんご存じですか?簡単に言うと、高周波などを使用して不整脈の原因となる心臓組織を焼灼する治療です。
私は、このアブレーションがとても苦手、いや嫌いでした。でも仕事ですので、やらなければなりません。
治療に際して使用する医療機器の難解さ、治療中の手技は何をしているかわからない、医師や技師の話していることはさっぱりわからず、なんだか連れてこられた猫のように治療が終わるのをじっと待つ日々が続きました。
不整脈治療との奮闘の日々
アブレーションに対する苦手意識をもって半年ぐらいでしょうか。
なんとか、治療中の看護師としての最低限の仕事はできるようになりました。
しかし、なんだか充実しません。「看護師としての仕事はできるようになったけど、治療中のこのもやもやした疎外感は何だろう」と。
それをどうにかしたい!そのためには何をしたらいい?自問自答する暇もなく、私はそれから毎日寝る前に不整脈治療の本を読むことにしました。
医師向けのその本は、読んでいると眠くなり度々そのまま寝てしまうこともありました。
日中は症例中に医師や技師の話すことに耳を澄ませて、「何のこと」と思う事をメモにとり帰宅してから本で確認する日々を過ごしました。
それでも、簡単に理解できることではありません。
様々な本を買い漁り、答えがないか読み漁り、気付くと私の部屋は不整脈の本でいっぱいになりました。
みなさんは「先生に聞けばいいじゃない」と思うかもしれません。私は先輩から、「質問するならちゃんと勉強してからにしなさい」と教えられて育った人間です。
当時、私自身も教育係として新人に教える場面が多くあり、教育の難しさも実感していた頃でした。
何一つわからない人に何かを教える難しさを知っているからこそ、安易に質問できない自分がいました。
不整脈の虜
一日中不整脈漬けの日々が続くと、いつのまにか医師や技師の話していることが分かってきました。
それからは、不整脈治療に夢中です。治療中の内容の理解が深まり、それによって何に注意したらいいのか、次起こりうることは何なのかわかるようになってきました。
医師に質問することもできるようになり、チームの一員として貢献できる喜びを感じました。
すると、アブレーションだけでなく不整脈疾患の患者を取り巻く心臓デバイス治療や薬剤治療、心理的問題、社会的問題などにも関心が向き始めました。
心臓デバイス、ペースメーカーやICDなどを取り扱うCDRの免許を取得し、デバイス外来にも所属しました。
また、デバイス患者の社会的、心理的問題に専門的なアプローチをしたいと思い認定心理士の免許を取得しました。
これからいまから
これまでの看護師経験から、最低限の仕事は数年もあれば十分にできるようになると思います。
それを良しとする人も恐らくいるでしょう。
私がこれまで出会った医療者で素敵だなと思う人は、必ず何かを探求している人です。
日常の業務に甘んじず、「もっとこうしてみよう」「これはどうなってるの」と常に子供のように好奇心を持った人です。
自分もそうでありたいと強く思います。
しかし、看護師の離職率が高いことを考えると仕事でのやりがいを感じない現実があると思います。
やりがいは与えられるものではなく、自分で見つけるものだと私は思います。
私が嫌いな言葉があります「そんなことは看護師が知らなくていい」。
知識はいくらあっても無駄なことは決してありません。どこかに自分が心底探求できるものがあるはずです。
見つけている人も、そうでない人もまずは、「いまから」行動してみませんか。