先生のお話

地域に根ざす看護師エコー活用 ~プライマリNPの活動実践を通して~

  • 医療法人社団ゆみの

診療看護師(NP)

橋 朋絵

ハシ トモエ
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プライマリNPの役割とは?

プライマリNP(プライマリナースプラクティショナー)の役割は多岐にわたり、地域医療における重要なハブとして期待されています。NPは、患者の初期対応や治療支援を行い、特に慢性疾患や予防医療に焦点を当てます。これにより、医療資源の最適化が図られ、患者が必要なケアを迅速に受けられるように日々関わっています。

地域におけるNPの役割は、患者との信頼関係を築くことから始まり、コンティニュイティ・ケアを提供することが求められます。また、医師や他の医療職と連携し、チーム医療を推進することで、患者に対する包括的なアプローチを実現します。健康教育や健康促進活動を通じて地域住民の健康意識を高めることもNPの重要な役割です。

さらに、地域のハブとして、NPは医療と福祉、地域社会との橋渡しを行い、患者のニーズに応じたサービスを提供します。地域医療の質を向上させ、住民の健康を支える重要な存在として期待されています。

プライマリNPが、心エコーで診ている所

NPが在宅で心エコーを活用して診る際には、心臓の構造や機能に加え、下大静脈(IVC)の評価も重要なポイントです。

心室や心房のサイズ、壁の厚さ、弁の動きなどを確認することで、心不全や弁膜症の兆候を把握します。特にIVCの評価では、その径や収縮の変化を観察し、静脈圧の目安として活用します。IVCが拡張している場合は、体液過剰や右心不全の可能性を示唆します。

また、IVCの大きさが呼吸に伴って変化するかどうかを評価することで、心臓の状態や血液循環の適切さを判断する材料とします。これらの観察・評価を通じて、患者に対する包括的な診断と治療方針の決定に貢献しています。

継続評価・follow UP訪問

NPは、脱水評価において心エコーを積極的に活用し、医師との連携を強化する重要な役割を果たしています。

脱水症状は特に高齢者や慢性疾患を抱える患者に多く、迅速な評価と治療が必要です。NPは心エコーを用いて下大静脈(IVC)の径や収縮状態を確認し、脱水の程度を判断します。フォローアップ訪問では、患者の体重、バイタルサイン、及びエコー所見をもとに状態を再評価します。これらの情報を医師と共有することで、治療方針の見直しや調整を行います。例えば、必要であれば補液量の変更や利尿薬の調整を行うなど、適切な介入を行います。

このように、エコーによる評価データを駆使し、医師と協力して、患者の健康状態を総合的に管理し、最適なケアを提供しています。これにより、脱水の早期発見や適切な治療につながります。

訪問診療・看護でのエコー活用場面

在宅の領域では、心不全の急性増悪や褥瘡管理、脱水補正において心エコーを活用し、医師との連携を密にする重要な役割を果たしています。

緊急往診時に心エコーを用いて心機能や血流を評価し、心不全の悪化を迅速に判断します。このデータを基に、医師と連携して治療方針を決定し、適切な薬物療法や治療計画を立案しています。

また、褥瘡管理においては、エコーを通じて血流状態を確認し、感染のリスクを評価することで適切なケアを提供しています。脱水補正についても、IVCの評価を行い、体液バランスを継続評価します。これらの所見を元に、NPは患者本人や家族との対話を重ね、意思決定支援を通じて、患者の希望を尊重した選択肢を提案します。

このように、患者の生活を支えるため、包括的なケアを提供し、心不全の管理や褥瘡対策を行うことで、患者のQOL(生活の質)向上に寄与します。個々のニーズに応じたケアを実施することが、NPの重要な使命です。

皆さまへのメッセージ

私の格言は、「現状維持は衰退」です。求められることに対し、謙虚に丁寧に対応しつつも、新しいことに挑戦し続けていきたいと考えています。

そして、プライマリNPとしての働き方をモデル化し、後進が続いてくれる道を作っていきたいと考えています。

在宅医療の魅力は沢山あり、ここでは語りつくせません。生活を中心とした在宅医療を一緒に支えてくれる仲間を、地域で待っています。